こんにちは、ゆるカピ(@yurucapi_san)です。
単純梁とかラーメン構造の断面力図を描くのって大変ですよね。
作業手順だけみても、
- 反力を求める
- 断面力を求める
- 断面力図を描く
という3ステップが本当に面倒で時間もかかってしまいます。
今回は、断面力図の特徴を生かして計算をショートカットする方法を解説します。
時間がかかってなかなか断面力図にたどり着けない人には朗報ですね。
- 構造設計実務歴7年目(組織設計事務所)
- 大学院時代に構造力学のTAを経験、ほか構造力学の指導経験あり
- 一級建築士試験ストレート合格

もっと詳しく知りたい人はこちらにもまとめています。
今回お伝えする方法はちょっとひねった応用問題には使えない可能性があるので要注意です。
建築士試験のように答えの値を選んだり曲げモーメント図の形状を選んだりする時くらいの使用に限定したほうがいいでしょう。
あくまで時短テクニックの参考にしてみてください。
標準的な解き方のおさらい

断面力計算の標準的な解き方はこちらの記事にまとめています。
単純梁の場合
断面力計算の基本である単純梁の解き方を知りたい場合はこちらの記事が参考になります。
ラーメン構造の場合
ラーメン構造の場合は「【構造力学の基礎】ラーメン構造の計算【第13回】」が参考になります。

いろいろ忘れてて自信がないなという人はチェックしてみよう。
解き方の手順はいずれも、
- 反力を求める
- 断面力を求める
- 断面力図を描く
の3ステップで構成されています。
言葉で表現するとシンプルですが、2つ目の断面力の計算は部材が増えた分だけ手間が増えて厄介です。

構造力学を解くのがめんどくさいなと思わせる原因の1つだね。
これを解消しようというのが今回の狙いです。
断面力図の簡単な描き方

断面力図の問題をたくさん解いていると、こんなことに気がつくのではないでしょうか。
- ピン、ローラー支点は曲げモーメントがゼロ
- 外力のところで曲げモーメントが大きくなっている
- 外力の位置でせん断力が反転している
これらの断面力図の特徴は、計算をショートカットするためのヒントになります。
特徴を踏まえた方法は以下のとおりです。
- 支点反力を求める
- せん断力図を描く
- 曲げモーメント図を描く

あ、断面力の計算の部分がなくなってる!
この方法では断面力の計算がごっそりなくなっています。
なお、わかりやすくするために「断面力図を描く」という手順を「せん断力図」と「曲げモーメント図」に分けて表現しています。
必要最低限のところだけ計算してなるべく断面力図を描くだけで済むようにした方法です。
順を追って計算の手順を説明します。
支点反力を求める
単純梁の荷重が集中荷重で$a:b$に内分する位置にあった場合、反力はそれぞれ、
$$V_A = \frac{b}{ a + b }P , V_B = \frac{a}{ a + b }P$$
になります。
反力の分子が$a:b$の逆比になっています。
集中荷重が真ん中にあれば半分ずつ。
計算しなくても求められるので、覚えておくと便利です。
せん断力図を描く
曲げモーメント図より先にせん断力図を描くのがポイントです。
- STEP 0求めた反力を図に描き込む
力の大きさと正負(プラスマイナス)、矢印の向きに注意する
- STEP 1左右の反力を上下にずらす
- 左側の反力:上にずらす
- 右側の反力:下にずらす
- STEP 2集中荷重の位置まで線を引く
左側の反力の矢じりの位置から集中荷重の位置まで線を引く
- STEP 3集中荷重を下にずらす
- 集中荷重の大きさと左側の反力の数値を引いた分だけ梁の位置より下側に線を下ろす
- 引いた数字を書き込む
- STEP 4集中荷重と右側の反力を線で結ぶ
下ろした位置の矢じりと右側の反力を線で結べばせん断力図が完成する

実際に手を動かして確認してみよう。
曲げモーメント図を描く
曲げモーメントの値はせん断力図で描いた凸凹の面積から求められます。
面積にマイナスはないのでプラスに直しておきます。
左右同じ大きさになっていることが確認できます。
あとはピン支点、ローラー支点の曲げモーメントがゼロであることに注意して曲げモーメント図を描けばOKです。

慣れたら素早く描けるようになるよ。
実際に問題を解いてみよう

単純梁の例で解説したので、片持ち梁やラーメン構造の場合についても使えるか、検証してみましょう。
片持ち梁の場合
図のような等分布荷重の場合について考えてみます。
左側の反力は既に求めてあります。
単純梁の場合と同じように、せん断力図から考えてみましょう。
まず左側の反力を上にずらします。
今回は荷重が等分布荷重なので長さがゼロの位置では$wL$の反力、長さが$L$の位置では$wL - wL = 0$というように、長さに応じて荷重が打ち消されていくような分布になります。
曲げモーメントの大きさはせん断力図の面積でした。
- 左端:モーメント荷重$\frac{wL^2}{2}$から長さゼロの面積を引く
- 中間:モーメント荷重からせん断力図の台形の面積を引く
- 右端:モーメント荷重から三角形の面積$\frac{wL^2}{2}$を引く
右端ではトータルゼロになっていることがわかります。
曲げモーメント図で表現すると図のような2次曲線になります。
個々の状態がわからなくてもこの曲線の形状を覚えておけば曲げモーメント図は描けます。
ラーメン構造の場合
最後に、ラーメン構造についても考えてみましょう。
こちらもせん断力図から求めていきます。
柱脚の水平反力は左右どちらかにずらして、鉛直反力は上にずらすのがポイントです。
下の図から、反力の矢印の大きさと荷重の大きさが最終的に打ち消し合っていることがわかります。
曲げモーメントはせん断力図の面積で求められるので、曲げモーメント図は以下のようになります。
ラーメン構造レベルになると、描くスピードは段違いに変わってくるのではないでしょうか。
(6/3追記)上の図のように、梁中央の曲げモーメントは左端の$3PL$から梁左側半分の面積を引かないといけません。このように、左端から曲げモーメントを追いかける場合は左端の面積を足していく(または引いていく)必要があります。
まとめ
この方法を使えば、建築士試験の断面力図を求める問題はサクサク解けるでしょう。
私自身この方法を知ったのは構造力学のTAをやっていた大学院生くらいのタイミング。
力学に慣れる前に知ったあなたが正直言って羨ましいです。
応用問題にも使えるかどうかは未検証なのでわかりませんが、大半の問題はこの方法で解けると思います。
ぜひ参考に活用してみてください。
ほかの問題もたくさん解いてみたいという人におすすめなのが、「ステップアップで実力がつく 構造力学徹底演習」という問題集です。
私自身、学生の頃はよく使っていました。おそらく一番問題数が多いので勉強になるはずです。

勉強するならやる気のある今がチャンス!問題量をこなしてライバルに差をつけよう。
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