こんにちは、ゆるカピ(@yurucapi_san)です。
よく、建築士って分業化が進んでることに対して、弊害も起こってるって聞いたことがあるんだけど、実際どうなの?
建築設計の業務の専門性は、ひと昔前に比べてかなり高くなっています。
これは、
- ICT技術が発達してより複雑なことができるようになった
- 建築に高い品質が求められるようになった
あたりが背景にあります。
このため、建築士の枠の中でさまざまな業務が生まれ分業化が進んでいる傾向にあります。建築士試験の実務要件にある業務範囲も、2020年の建築士法改正で大幅に拡充されました。
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その一方で、設計の分業化に伴う問題がたびたび話題にあがります。
2019年に実施された一級建築士試験の設計製図の合格基準では、PS・DS・EPSの取り扱いが今まで以上に重要視されるようになり、一説では設計の分業化の弊害を問題視しての対応なのではないか、ともいわれています。
つまり、意匠担当者と設備担当者、構造担当者とのコミュニケーション不足によって設計瑕疵が出てきて問題になっているということです。
私自身、組織設計事務所に勤めて6年弱が経ちますが、この手の問題は設計瑕疵レベルまでには発展しないにしても、些細なトラブルは頻発して起こっているのが実情です。
今回は、組織設計事務所の一所員としての立場から、設計の分業化のメリット・デメリットについてまとめてみました。
設計の分業化のメリット
分業化のメリットは以下のとおり。
合理的に設計が進められる
建築の専門領域が深くなるにつれて、建築士ひとりで設計できる建物がかなり限られるようになりました。
小さな小屋レベルしか設計する時間的にも厳しいんじゃないかな。
自宅を自分で設計する際も、自分の専門領域以外は外部に委託する場合がほとんででしょう。
建築を設計するのに必要な知識と経験を分担することで、1人あたりの負担量を減らしたり時間を大幅に節約できたりします。
まあ、それでも長時間労働になってしまうわけですが...。
専門性に特化した人材を育成できる
建築設計の場合、
- 意匠系
- 構造系
- 設備系(さらに空調と衛生に分かれることが多い)
- 電気系
- インテリア系
- 積算系
というように、さまざまな専門領域に特化した人材を育成することができます。
新卒で就職する際も、上記のような専門職としてあらかじめ設定されていて、専門性に特化した人材育成を目的としている設計事務所も多いです。
一般的なメンバーシップ型の企業と違って、企画志望だった人が営業に配属された、なんてことが起こらないのが専門職のいいところかな。
設計の分業化のデメリット
分業化のデメリットは以下のとおり。
他系統と調整する必要がある
一般的に意匠担当者が設計工程や他系統との調整といったマネジメントを担当するため、担当者の手腕に左右されてしまう傾向にあります。
これは意匠系の設計事務所と構造系の設計事務所というように、別の設計事務所どうしだけの問題ではなく、あらゆる専門領域の人が集まる大手の設計事務所の場合でも当てはまります。
他系統とのトラブル処理に追われることも少なくないので、これに関しては意匠担当者は大変だなと感じます。実際、私の周りでも体調を崩して離職してしまった人が何人もいます。
それにしても、エンジニア系の人は喧嘩腰な態度で接してくる人が多い印象を受けます。相対的に責任が重い業務をこなしているとはいえ、喧嘩腰に対応していい理由にはならないはずです。
自分もエンジニア系だけど、これはいつも疑問に感じるところ。
同じ建物を設計しているかたわら、協力姿勢でのぞみたいところです。
専門外のことはノータッチになる
これは契約でそうなっている場合もあるので、一概にダメというわけではありませんが、専門外のことは一切協力しません、という強硬的な態度をとる人は多いです。
責任関係を明確にする。
この考えは、自身の専門領域の業務を全うするという意味では納得がいきます。
ただ、同じ建物の設計の仕事をしているにも関わらず、責任がないので全く知りません、というお役所的な対応になってしまう可能性があることには注意が必要です。
専門領域のプロである以前に、建築士である自覚をもつ。
そのために建築士の試験では自身の専門領域のことを深く勉強するんだと思っています。
ちょっと厳しめな内容になりましたが、自戒も込めて書いてみました。
自分の場合は、なるべく他系統の図面は目を通すようにしてるし、疑問に感じたら質問するようにしてるよ。
昨今のサブスクリプション台頭から学べること
昨今登場し始めたSaaS企業が運営しているサブスクリプションサービスは、売りっぱなしのソフトウェア会社に対するユーザの不満から生まれています。
売り切りタイプのビジネスモデルは、その後のアフターフォローが貧弱になりやすく、営業、設計、保守の部署がそれぞれ別々に動いてうまく連携がとれていないことがよく問題になるそうです。
この辺の話は「サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル」という本で詳しく解説されています。
分業化の課題は建築業界も同じ
建築の設計に関しても、連携不足の問題は同様に当てはまります。
クライアントやエンドユーザにとっては、意匠・構造・設備・電気などの設計の枠組の問題は知ったこっちゃない、というのが本音だと思います。
最近は、第三者の立場でプロジェクト全体をマネジメントするPM・CM系の会社が登場する機会が増えてきています。おそらくはプロジェクトの進め方に関して、課題解決のための需要が高まっているのでしょう。
PM・CM系の会社が関わらない場合でも、うまくプロジェクトチームを束ねる素質のある人が求められることになると思います。
行政やクライアントとの打合せ対応などの業務の多い意匠担当者にすべて任せていたら、いずれ破綻するのは明らかでしょう。
同じ建物を設計するチームとして、協力的な姿勢で対応していきたいところです。
まとめ
今後も分業化の流れは進んでいきますが、より一層マネジメントスキルが求められるようになると思います。
とはいえ、これを意匠担当者にすべてお任せ、というやり方には限界があります。同じ設計チーム内で言い争っている場合ではありません。
お互い協力し合って、いいものを作りましょうよ。
そんな感じで今回は締めたいと思います。
それでは、また。
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