こんにちは、ゆるカピ(@yurucapi_san)です。
前回、節点法について解き方の解説をしました。今回はトラス構造のもうひとつの解き方である切断法について解説していきます。
切断法は、必要な軸力を短時間で求める方法なので、時間に制約のある建築士試験で解く場合などで非常に便利です。節点法に慣れてきたという人は、ぜひ切断法を覚えてトラス構造の問題を得点源にしましょう!
切断法の特徴

切断法(断面法)は、部材を任意の位置で仮想的に切断し、鉛直方向、水平方向、回転方向のつり合い式から軸力を求める方法です。
人によっては回転方向のつり合い式が増えてちょっと計算が面倒かも、と思うかもしれません。しかし、これに慣れてしまえば節点法よりはるかに楽チンだったりします。
切断法には、3つあるつり合い式のうち回転方向の式の立て方にはちょっとしたコツがあります。それは、回転中心を複数の力の作用線の交点に設定する、ということです。これを意識して問題を解くかどうかで計算の面倒臭さが大幅に変わります。
おそらく、言葉で書いただけではよくわからないと思うので、後ほど図を交えて詳しく説明します。
解き方の手順

切断法の解き方は以下の手順で行います。
- STEP 1支点反力を求める
- 解き方は節点法と全く同じ。
- 鉛直方向、水平方向、回転方向の力のつり合い式から支点反力を求める。
- STEP 2部材を仮想的に切断する
- 求めたい軸力が含まれている部分で部材を仮想的に切断する。
- STEP 3作用する力のつり合い式を立てる
- 鉛直方向、水平方向、回転方向の力のつり合い式を立てる。
STEP 1の支点反力のところまではほかの計算と全く同じです。節点法でもそうですが、試験によく出題されるのは静定トラスの問題なので、支点はピン支点とローラー支点の組み合わせになります。
重要なポイントをピックアップ
STEP 2と3について、重要なところをピックアップしてみました。自由体の軸力の向きの考え方は節点法と全く同じです。単に節点が部材に変わっただけです。理解があいまいな人は節点法で解説しているので、こちらを参考にしてみてください。
一度に切断できる部材は3本まで!
力のつり合い式は3つまでしか作れないので、未知数を設定できるのは3つまでです。部材の切断の仕方によっては4つになりますが、この場合は問題が解けません。
切断する部材は必ず3本以下になるように注意しましょう。
複数の力の作用線の交点を回転中心にする
回転方向の力のつり合い式を立てる時、回転中心を複数の力の作用線の交点に設定すると計算がラクになります。
力の作用線の交点が回転中心になると、作用線上にある力はすべて、うでの長さがゼロになるのでその分を計算しなくて済みます。力のつり合い式は支点反力と軸力1つのみの式になるので、簡単に軸力が求められます。
これを利用して回転方向のつり合い式を2つ、鉛直方向または水平方向のどちらか1つの式だけで切断位置の軸力がすべて求めることもできます。
例題を解いてみる
実際に例題を解いてみましょう。今回は、切断法のメリットが感じられるスパンが長いトラス橋の問題に挑戦してみたいと思います。
求めたい軸力はトラス橋の中央の$N_1$、$N_2$、$N_3$です。
支点反力を求める
まず支点反力を求めます。つり合い式はそれぞれ鉛直、水平、回転方向の順に、
$$V_A + V_B - P - 2P - 3P = 0 \Leftrightarrow V_A + V_B = 6P$$
$$H = 0$$
$$P \times 2L + 2P \times 3L + 3P \times 4L - V_B \times 6L = 0 \Leftrightarrow 20PL = 6 V_B L \Leftrightarrow V_B = \frac{10P}{3}$$
となります。モーメントのつり合い式は、力×うでの長さであることに注意して計算しましょう。
支点反力は、
$$V_A = \frac{8}{3}P , V_B = \frac{10}{3}P , H = 0$$
です。
部材を仮想的に切断する
求めたい軸力$N_1$、$N_2$、$N_3$がある位置で切断した自由体図を考えます。この時、4箇所以上の部材を切断すると計算できなくなるので注意しましょう。軸力$N_3$が隣の部材にあったとしても、一緒に切断するのはNGです。
作用する力のつり合い式を立てる
切断した自由体図の力のつり合い式を立てます。今回のようなトラス橋の場合は、2つ解き方の方法があります。
方法1:鉛直、水平、回転方向それぞれ1つの式を考える
鉛直、水平方向の式は次のとおりになります。
$$\frac{8}{3} P - P -\frac{N_2}{\sqrt{2}} = 0 \Leftrightarrow N_2 = \frac{5 \sqrt{2}}{3} P$$
$$N_1 + \frac{N_2}{\sqrt{2}} + N_3 = 0$$
回転方向のつり合い式は、回転中心候補①、②どちらかとします。今回は回転中心候補①で考えます。
$$\frac{8}{3} P \times 2L - N_3 \times L = 0 \Leftrightarrow N_3 = \frac{16}{3} P$$
これらを解くと、
$$N_1 = -7P, N_2 = \frac{5 \sqrt{2}}{3} P , N_3 = \frac{16}{3} P$$
となります。
方法2:鉛直の式1つと回転方向の式2つを考える
鉛直方向のつり合い式は方法1と同じです。
$$\frac{8}{3} P - P -\frac{N_2}{\sqrt{2}} = 0$$
回転中心候補①と②の場合のモーメントのつり合い式はそれぞれ、
$$\frac{8}{3} P \times 2L - N_3 \times L = 0$$
$$\frac{8}{3} P \times 3L - P \times L + N_1 \times L = 0$$
となります。答えは方法1と同じになるはずです。どれが一番解きやすいかは問題によりますが、ピンポイントで軸力が求められるモーメントのつり合い式のほうが便利なので、方法2のほうがおすすめです。
まとめ
お疲れ様でした。
切断法は一度慣れてしまえば、もう節点法には戻れないと思うほど非常に便利な方法です。計算ミスチェックが減らせるのも魅力ですね。
ぜひ切断法をマスターして、建築士試験のトラスの問題をサクッと解けるようにしちゃいましょう!
以下、関連記事です。トラス構造の基本的なことや節点法について知りたい人はこちらもチェックしてみてください。それでは、また。
もっとトラス構造の問題を解いてみたいという人はこちらの本がおすすめです。
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